平昌オリンピックで話題の多かったアイスホッケー女子、これからに期待

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Ice Hockey Gold medalists from Canada in Vancouver 2010; Feb 26, 2010 @Downtown Vancouver
バンクーバーオリンピックで金メダルを獲得したアイスホッケー女子選手たち。中央は当時の連邦スポーツ担当大臣。2010年2月26日バンクーバー・ダウンタウン

アイスホッケー女子は、アメリカの優勝で幕を閉じました。アメリカは1998年長野オリンピックで金メダルを取って以来、20年来の悲願の達成でした。2002年ソルトレイクシティオリンピック以降、カナダが4大会連続金メダル。5大会ぶりに金メダルがアメリカに渡りました。

これも一つの歴史的な瞬間でした。この他にもアイスホッケー女子には、いくつもの歴史的出来事がありました。

 

韓国・北朝鮮合同チームの編成

始まりは北朝鮮がピョンチャンオリンピックに参加すると発表した時から始まりました。その中で、アイスホッケー女子は特に韓国と北朝鮮が合同チームを作ることになり、選手やコーチが好むと好まざるとにかかわらず、注目されることになりました。

北朝鮮からは応援団が会場に駆けつけ、大声援を送る姿が、合同チームが試合をするたびにテレビ・新聞で伝えられました。

その初戦では、北朝鮮の政府関係者、韓国の大統領、国際オリンピック委員会(IOC)会長とオリンピックにおいての超VIPが揃って観戦し、世界が注目する特別な試合になりました。

カナダも無縁ではありませんでした。このチームのヘッドコーチはカナダ人のセーラ・マーレイさんです。カナダ人コーチの一言一言が世界中に発信されました。

これまで4年近くかけて作り上げてきた韓国チームに突然本番2週間前になって北朝鮮選手が加入するというハプニングに見舞われ、明々と当たるスポットライトのど真ん中に引きずり出され、それでも冷静に対応し、大会を無事戦い抜きました。

本来なら出場できるはずの韓国代表選手の中にはこのために出場機会が減った選手もいるはずです。そうした選手を説得しながら、降りかかった政治的な災難を乗り切るのは大変だったと思います。

それでも初戦の前にはCBCのインタビューに答え「今では北朝鮮の選手にコーチするのは楽しいです。北朝鮮選手も貪欲にホッケーに取り組んでいます」と言ったマーレイ・ヘッドコーチの言葉に、カナダ人のホッケーに対する懐の深さを見た気がしました。

 

もう一つの20年ぶりの悲願達成

アメリカの20年ぶりの金メダルという悲願達成にカナダでは落胆が大きかったですが、今大会ではもう一つ20年来の悲願を達成した記録があります。

日本代表のオリンピック初勝利です。日本では1998年長野大会の時に初めてアイスホッケー女子が開催国枠でオリンピックに出場しました。男子のアイスホッケーですらほとんど知られていない日本のスポーツ界で、女子チームの編成は大変だったと思います。もちろん全敗でした。

その後も出場したオリンピックでは1勝もできていませんでした。それでも、少しずつ着実にチームを作り上げ、今回のピョンチャンで悲願の初勝利を挙げました。相手は韓国・北朝鮮合同チーム。世界ランク的にはもちろん日本が上です。

しかし何があってもおかしくないのがオリンピック。特に開催国の地の利がある合同チームとその注目度の高さが日本にとってプレッシャーになってもおかしくありません。もしかして…という可能性もあったと思います。

そんな中で挙げた初勝利は日本の選手たちにとって自信になったでしょう。そのせいでしょうか、スウェーデンにも勝利し、今大会2勝を挙げました。これからが楽しみです。

 

アイスホッケー女子の発展をカナダに期待

この種目は1998年長野オリンピックで正式種目となってからアメリカとカナダの2強で決勝戦を争ってきました。カナダが金メダルならアメリカが銀メダル、アメリカが金メダルならカナダが金メダルです。(2006年トリノでは、金カナダ、銀スウェーデン、銅アメリカでしたが)。

その構図は、おそらくこれからもしばらく続くと思います。

しかし、やがては今大会のカーリングのように、混戦模様になってほしいと思います。それが、アイスホッケー女子がオリンピックで生き残っていく道でもあるはずです。

今回は、その兆しが出てきた大会だったのではないでしょうか。そして今後さらに女子ホッケーが発展していくには、王者カナダの役割は大きいです。

今はアメリカに敗れて傷心しているかもしれませんが、カナダが世界トップであることに変わりはありません。それは、金メダルの数や技術的なことだけでなく、ホッケーに対する熱い思いでも世界トップだからです。

合同チームを率いたマーレイ・ヘッドコーチは、今大会で韓国と北朝鮮の選手が、そして国民が、ホッケーが面白いと思ってくれると嬉しいと語っていました。

同感です。世界で発展してこそ、オリンピック競技であることの意味を持ちます。そのためにはカナダの役割は大きいと思います。ホッケーの面白さを世界に伝える。そして世界全体のレベルアップが実現し、その上で、やっぱり王者カナダが金メダルを取る姿を見たいと思いました。

今後のアイスホッケー女子でカナダがホッケーアンバサダーとなる活躍に期待したいと思います。