3か月後に迫ったバンクーバーマラソン。今年で第48回を迎える人気のマラソン大会は、世界各国からプロ・アマチュアを問わずにやってくる。
毎年5月の第1日曜日に開催されるため、日本ではゴールデンウィークということで、日本からも参加する多くのランナーが参加する。
バンクーバーマラソンが世界中のランナーを魅了する理由の一つはそのコース。
コースの約70パーセントがバンクーバーの美しい海岸線というコースは、走るだけではもったいないほどの景色が広がっている。しかもそのあちらこちらにバンクーバーの人気観光スポットが散りばめられている。
フルマラソンを走っている途中に観光地を巡り?!ということはないが、マラソンに参加しなくても行ってみたくなるその人気コースを今年も紹介しよう。
スタートはクイーン・エリザベス(QE)公園
スタート地点は、バンクーバーの中心地に位置する小高い丘全体が公園となっているクリーン・エリザベス(QE)公園。広い公園内でもスポーツ施設が集まる辺りがスタート地点だ。
ここにはカナダの大リーグチーム、トロント・ブルージェイズ傘下にあるマイナーリーグ・シングルAショートシーズンに所属するバンクーバー・カナディアンズの本拠地ナットベリー・スタジアムや、2010年バンクーバーオリンピック・パラリンピックでカーリング会場となった施設などがある。
コースは、名門大学ブリティッシュ・コロンビア大学を周回
QE公園をスタート後、コースは洒落た街並みが人気のケリスデール地区を通り、カナダの名門大学ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)を周回する。
バンクーバー市の西端に位置するUBCは、広大なキャッパスがまるで一つの町のようで行くたびに校内で迷うのだが、周りは3方を海で囲まれ、景色がよいことでも知られている。南側にはバンクーバー国際空港、その先にはアメリカの山々が見え、突端の西側はバンクーバー島へと続く美しい島々が、北側にはダウンタウンの向こうにこの時期ならまだ雪が残るノースショアの山々が美しくそびえている。
コースは大学を周回するため、天気がよければこれらの景色を見ながら走ることができるポイントもあるはずだ。観光地で有名なUBC人類学博物館の前も通る。
街で最もお洒落なキツラノ地区を抜け、ダウンタウンへ
大学を抜けると、コースはバンクーバーでも最もお洒落なキツラノ地区に入る。ここでもコースは海岸線を走っていく。
左手に北のノースショアを臨みながら、キツラノ地区の清々しい雰囲気の中を抜けていく。この辺りは夏になると若者であふれるキツラノビーチが有名。すぐ近くにあるキツラノプールは全長137メートル。この時期はまだオープンしていないが、興味があればぜひ夏に戻ってきて挑戦してほしい。
そしてコースは、歴史的建造物のバラードブリッジを越えダウンタウンに入る。
ダウンタウンで人気の観光地を抜け、ゴール地点へ
ダウンタウンに入ると左に折れ、海岸線を走り、キツラノと並んで人気のビーチ、イングリッシュ・ベイへと向かう。ここも夏になるとやはり若者であふれる。
その少し手前に、大きな石像が目に入る。「イヌクシャック」だ。これは、カナダ百科事典(デジタル)によると、元々はカナダ北方に住むイヌイットが石を積み重ねて、道標やコミュニケーション手段として使っていたもの。精神的な崇拝対象ともなっていた。その中の一つが人の形をしたもので、元々は違う名前だが、その親しみのある形からこれが人々の間で有名になり、一般の人々の間で「イヌクシャック」と言えば、この形を指すようになったという。
そして2010年バンクーバーオリンピックのロゴの原型にもなった。これよりも小さいが、ウィスラーのふもと、そして、頂上にも石像が設置されている。
「イヌクシャック」、イングリッシュ・ベイを抜け、コースはスタンレーパークへと入っていく。バンクーバーで最も人気で、最も有名な観光地だ。
スタンレーパークは、バンクーバーで唯一の国立公園。トーテムポールが印象的。元は先住民族が多く住んでいた場所だったことで知られている。巨木が林立する緑生い茂るこの公園は、さまざまなアトラクションが用意されている。
人気はバンクーバー水族館で、他にもプールやティハウス(パブに改装予定)、公園や馬車での周回など飽きることがない。
そしてマラソンコースとなっている外周は、普段は、人々がウォーキング、ジョギング、ローラーブレードなどを楽しむ約10キロのコース。
コース沿いは、西側はジョージア・ストレートに続く海が広がり、北側にはノースショアへつながるライオンズ・ゲート・ブリッジ、東はバラードインレットが広がっている。バラードインレットでは、大きなタンカーが多く見られ、水上飛行機が頻繁に離発着している。
大都会の真ん中では珍しい光景だ。さらに珍しいといえば、このバラードインレットには時々クジラが現れる。信じられないかもしれないが、最近は以前より頻繁に見られるようになった。迷い込んだクジラの姿は、都会と自然が融合するバンクーバーならではの光景だ。
そしてダウンタウン側に近づいてくると左側にはバンクーバーのシンボル「カナダプレース」が見えてくる。1986年に開催されたEXPO86(バンクーバー国際博覧会)でカナダパビリオンとしてオープンした。
以来、その独特の形から、バンクーバーのシンボルとなっている。現在でもコンベンションセンターやイベント会場として使用され、IMAXシアターやパンパシフックホテルを併設。夏になるとアラスカクルーズの発着地ともなっている。2010年バンクーバー五輪ではメディアセンター(紙媒体用)としても使用された。
スタンレーパークを抜けるとゴールはすぐそこ。ダウンタウンの真ん中でゴールする。
ゴール近くでは、この日、フィニッシュ・ライン・ストリート・フェスティバルが行われている。
こうしてみると、バンクーバーマラソンコースは、バンクーバーの観光地をほぼ網羅していることになる。42.195キロを走るのはちょっと大変だが、これらのコースに散りばめられたバンクーバーの名所はぜひ訪れてほしい。
2018年バンクーバーマラソンは5月6日に開催される。スタートは8時30分。フルマラソンはなかなか厳しい。それでも途中でランナーを激励したり、ゴールラインで拍手で迎えるのはどうだろう。ランナーでなくても楽しい体験に違いない。