最近はまっているドラマがある。“The Big Bang Theory”だ。アメリカのシットコムで、ちょっと前には、「フレンズ」やら「ウィル&グレイス」やらが人気を博した30分のコメディドラマだ。
The Big Bangとは「宇宙の始まり」といわれているものだが、“The Big Bang Theory”は天才でオタクな科学者4人が繰り広げるコメディドラマだ。
ドラマは、天才でオタクな科学者たちの集まりとあって、その会話はかなりサイエンスチックで難しい。何を言っているか分からない時が多々ある。それがまたオタクっぽくって、面白くて、ついついはまってしまうのだ。
4人ともカリフォルニアにある大学で研究に励んでいる研究者という役で、そのうちの1人はインド出身。インド訛りの英語でよくしゃべる。インドの人はだいたいみんなこの役柄の人のようなインド訛りを喋る。バンクーバーにはインド系移民の人が多いからよく分かる。バンクーバーでタクシーに乗ると経験できるのでぜひ。
さて、7月の初め、いつものように“The Big Bang Theory”を見ていたら、このインド系研究者ラジが、友人の彼女（もしくはフィアンセ）に星の話を語り始めた。彼はプラネタリウムでの案内も仕事としている。
その星の話が、「おりひめとひこぼし」だったのだ。『1年に1度、第7の月の、第7の日に、2人は天の川を渡って出会えることになったのです』という私たちがよく知る七夕ストーリーだった。
すごく驚いた。まずアメリカのコメディで「おりひめとひこぼし」のストーリーが出てきたのに驚いた。さらにインド人が語る設定というのに驚いた。インドにも七夕があるのだろうか?私たちは中国で生まれた逸話と教えられた。
インドにあるとは聞いたことなかった。調べてみた。
結論としては、中国が起源ということだった。インドはなかった。ちなみになぜ7月7日なのかも分からなかった。
1年に1度だけ好きな人に会うという話がロマンチックなだけに、そちらの方に焦点を当てた紹介が多かった。これは京都の縁結びの神さま「京都地主神社」の七夕ストーリー。縁結びの神さまのサイトで読むと何だかありがたい気がする。
https://www.jishujinja.or.jp/tanabata/story/
七夕は、日本では5節供（5節句）の一つという。5節供とは、1月7日人日（じんじつ）：七草の節供、3月3日上巳（じょうし）：桃の節供、5月5日端午（たんご）：菖蒲の節供、7月7日 七夕（たなばた）：笹の節供、9月9日重陽（ちょうよう）：菊の節供。どれも植物と結びついている。
なぜラジがアメリカで七夕の話をしたのか? アジアのお話＝アジア人＝インド人、というつながりだったのだろうか? “The Big Bang Theory”には日本のことや日本人の名前もよく登場する。七夕の話を知っているスタッフがいても不思議はないかも。
七夕の夜にバンクーバー交響楽団の屋外コンサートでロマンチックに
バンクーバー交響楽団（VSO）はバンクーバーを拠点とする交響楽団で、この町にはファンも多い。でもやはり交響楽団って、ちょっと敷居が高かったりする。
そんな交響楽団が昨年から1年に1度だけ屋外コンサートを始めた。しかも無料。多くの人に素晴らしい音楽を楽しんでもらいたいと始まったコンサートだ。
Vancouver Symphony Orchestra（VSO）がサンセットビーチに設置された特別な舞台で、日が長いバンクーバーの夏にようやく帳が降り始める8時から開幕するコンサート、“Symphony at Sunset”。ネーミングまでロマンチックだ。
七夕と言えば日本では梅雨の真っただ中で、おりひめとひこぼしの1年に1度のデートが雨で見られないということも多いが、バンクーバーは爽やかな天気が続く絶好のタイミング。
しかし今年は例年になく雨が多い7月のせいで、この日も朝から雨が降り続いていた。
コンサート開催も危ぶまれるほどの雨だったが、天帝へのおりひめとひこぼしの願いは届いた。天の神さまへのVSOファンの願いも届いた。
昼過ぎまで空一面を覆っていた厚い雲のカーテンは、コンサートの開幕に合わせるように上がり始め、バンクーバーにクラシックが流れる頃には雲の切れ間から夕暮れの太陽の光が照明のように舞台に差し込んでいた。
楽曲は、ETが子供たちと自転車で空を駆ける時に流れるETのテーマ、Romeo & Juliet Fantasy-Overture、West Side Storyなど、この日が七夕と知ってか知らずか、ロマンチックな選曲となっていた。夜空ではおりひめとひこぼしもきっとデートの真っ最中に聞いていたに違いない。
Symphony at Sunset。バンクーバーの夕空の下で、七夕に交響楽団の演奏を楽しむという贅沢な時間となった。
