カナダにいるなら絶対「ラッキー・ルーニー」を手に入れる?!

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持っていると幸運が舞い込む?!五輪マーク入り、ラッキールーニー。

ホッケーとルーニーのラッキーな関係

2014年「ラッキー・ルーニー」が発行された。アイスホッケー男女カナダ代表を金メダルに導いたという、まさしくラッキーな金色に輝く1ドル硬貨。銀行を通して市場に出回った。

「ラッキー・ルーニー」とは、2002年ソルトレイクシティ冬季五輪に端を発する、いわゆるカナダの願掛け。アイスホッケー会場の整氷作業を担当していたカナダ人スタッフが、リンクの中心にルーニーを埋め込んだのが始まりだ。

「ルーニー」とはカナダの1ドル硬貨の愛称で、裏側にLoon(ハシグロアビ)が描かれていることからそう呼ばれている。金色に施されていて、真新しい硬貨は金貨のように光っている。

ソルトレイクシティ五輪の製氷に当たったカナダ人スタッフが、リンクの中心にルーニーを埋めたのは、偶然のチャンスを生かした彼らのカナダを思う心遣いからだったのが、この話はすぐにカナダホッケー関係者の耳に入り、やがて選手にも伝えられた。それほどまでに、この時のカナダ代表は男女とも追いつめられていたのだ。

アイスホッケーはカナダでは単に「ホッケー」と呼ぶ。スポーツに興味のない国民もホッケーだけには熱狂する国民3300万人総ホッケーファン。それがカナダだ。冬の国技でもあり、毎週土曜日にCBCで放送されている“Hockey Night in Canada”のテーマ曲は、第2の国歌とさえ言われていた。(そのテーマ曲は、現在は違うテレビ局が使っている)。

その熱狂ぶりに興味のない人間が、「たかがホッケー」などとは言ってはいけない。ホッケーはすべてを凌駕する。それがカナダでのホッケーの位置づけである。

ラッキー・ルーニーは長野五輪の悲劇から生まれた?!

カナダにはカナダ人のアイデンティティを示すものが3つあると言われている。ひとつはメープルリーフ、ひとつはドーナツチェーン店ティム・ホートンズ、そして最後がホッケーだ。

ちなみにこのドーナツ店は、ティム・ホートンズという元NHLの選手が始めた店である。つまりホッケーとカナダは切っても切れない関係であり、ホッケーだけは世界一と信じている。そして、五輪ホッケー代表選手たちは、国民の誇りと期待と責任を一身に背負って大会に臨むのだ。

その五輪が今のようなある種の異様な雰囲気をカナダにもたらしたのは、1998年長野大会から。この時から、ホッケー最高峰のナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)の選手が本格的に参加した。

何が何でも金メダル。いや、金メダルしかあり得ないという雰囲気だった。それも当然といえば当然の話。NHLで活躍する選手の半分以上がカナダ人という中、世界最高峰のベストの中のベストがカナダ代表を作るのだ。しかもこの時、代表の中には、あのウェイン・グレツキー選手も含まれていた。国民が期待するのも無理はない。

国民はカナダの金メダルをこれっぽっちも疑っていなかった。しかし結果はメダルにすら届かない4位。この大会から正式種目になった女子も宿敵アメリカに敗れ銀メダル。ホッケー王国の誇りは見事に砕かれ、敗北感だけが残った五輪となった。

そのリベンジを喫して臨んだのがソルトレイクシティ大会。それでも、前評判は芳しくなかった。特に女子はアメリカに連戦連敗して五輪に入った。そんな崖っぷちの状況で、整氷スタッフの粋な計らいを聞きつけ、結果的にアベック優勝に一役買った「ラッキー・ルーニー」は伝説となり、カナダにとってのげんかつぎとなった。この時のルーニーは、ホッケーの殿堂(オンタリオ州トロント)に展示されている。

バンクーバー五輪でも「ラッキー・ルーニー」の効果は健在だった。ホッケー男女アベック優勝と、開催地で唯一金メダルを獲得していない国という汚名も返上した。金メダル数は大会最高の14。そして、その願掛けはソチ大会でも引き継がれ、もちろん、男女アベック優勝を成し遂げた。

そんな偉大なラッキー・ルーニーだが、実は誰でも手に入れることができる。ソルトレイク大会以降の夏も含めた五輪イヤーには毎回発行しているので、2014年はすでに5回目。バンクーバー五輪の時は公式ロゴのイヌクシャックを描いた硬貨が発行された。

この時のルーニーは、Royal Canadian Mintのスタッフが「持っていると幸運に恵まれるわよ」と教えてくれたので、その言葉を信じて、財布の中に忍ばせてある。

そして、来年、2018年はオリンピックイヤー。冬季五輪が韓国・平昌で開催される。しかし、ここで残念なニュース。NHLは今年、来年の韓国大会に選手を参加させない方針を決定した。チームがOKと言えば、参加したい選手は出場できる余地は残している。果たして、来年もラッキー・ルーニーは発行されるのか?五輪競技からホッケーがなくなることはない。ぜひ、発行してもらいたい。

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発行しているRoyal Canadian Mint。バンクーバー・ダウンタウン。

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