バンクーバー時間で昨日の夜遅く、スキージャンプ女子決勝が行われました。日本の高梨沙羅さんが銅メダルを獲得。スキージャンプファンとしては、ホッとしたでしょう。
スキージャンプ女子がソチ大会で正式種目になると決まった直後から、圧倒的な強さを見せて金メダル確実と注目されていた当時10代だった高梨さんはソチ大会で4位。世界中が驚きました。それでも小さな日本人女子の世界での圧倒的な強さは、スキージャンプ女子という競技が広く知れ渡るきっかけを作りました。今回メダルが取れて本当に良かったです。
そのスキージャンプ女子ですが、バンクーバー五輪では違う意味で注目を集めました。きっかけは、2006年に国際オリンピック委員会(IOC)がバンクーバー五輪で正式種目として導入しないことを決定したことでした。
当時の資料を見てみると、IOCの主張は競技人口と国際試合が不十分ということでした。この決定に不満を抱いた世界のトップスキージャンプ女子選手15人が、2009年にバンクーバー大会の実行委員会(VANOC)に対し女子種目がないのはカナダの『権利と自由の憲章』に違反すると訴えました。
この問題は当時かなりの注目を集め、ドキュメンタリーも制作されました。
『権利と自由の憲章』とは、簡単に言うとカナダ国内であらゆる差別から市民を守る憲章です。民族、宗教、人種など差別の種類はさまざまですが、性別ももちろん含まれます。そして訴える側は、カナダ国内で受けた差別であれば、国籍や在住国は問いません。同じように2015年FIFA女子ワールドカップでも、女子選手が人工芝使用を巡って訴えを起こしました。
スキージャンプ女子選手の主張は、カナダの大会で男子種目があって、女子種目がないというのは女性差別に当たるというものでした。
BC州最高裁判所は、VANOCに参加種目決定権がないこと、決定権があるIOCはカナダの司法権外であることを理由に訴えを退けました。しかし、IOCがスキージャンプで女子種目を導入しないのは女性差別にあたると明言しました。男子も競技としてIOCが主張するほど世界的に普及しているわけではないというのが理由でした。
彼女たちの訴えはバンクーバーでは実を結びませんでしたが、ソチでは正式種目として導入されました。決して無駄ではなかったということです。この裁判長の言葉を引き出したことでソチでの導入はほぼ確約されたようなものでした。当時VANOCのCEOも次回以降の大会で導入されることを希望すると語っています。
一説には、当初はソチで参考種目とし、今回のピョンチャンで正式種目となることが予定されていたとも言われていました。どちらにしてもソチで正式種目となったのは、競技発展の上でも正解だったということでしょう。当時、BC州最高裁判所の裁判官がIOCの女性差別を判決に明記したことは画期的だったと評価されました。IOCはもちろん反論していましたけどね。
他に女子種目がない競技は?
バンクーバー大会から導入されたのはスキークロスのみと前回に紹介しました。スキージャンプ女子はソチ大会です。では、他に女子種目がない競技はあると思いますか?
答えは、ノルディック複合です。スキージャンプとクロスカントリースキーと2種目を一人でこなす競技ですね。男子は個人と団体がありますが、女子はありません。現在のところ2022年導入を目標に世界大会などを調整中のようです。
その他、種目の数や距離が違う競技も紹介しましょう。
スキージャンプは、女子がソチ大会から導入されたことは紹介しましたが、個人ノーマルヒルのみ。男子のように個人ラージヒル、団体はありません。
スピードスケートでは、男子に1万メートルがありますが、女子は5000メートルまで。代わりに3000メートルがあります。
スピードスケート・ショートトラックでは、団体は男子が5000メートル、女子は3000メートルです。
ボブスレーは、女子2人乗りが2002年ソルトレイクシティ大会から正式種目となりましたが、4人乗りは現在でもありません。
バイアスロンは、全ての種目で女子の方が男子よりも距離が短くなっています。
夏の競技にもこうした距離の違いなどがあり、専門家の間ではそろそろこうした男女の距離の差をなくすべきではないかとの声も上がっているようです。
男女に関係なく、オリンピックに出場するような超人的なアスリートはみなさん毎日毎日すごい量の距離をこなす練習を積み重ねているわけで、さらに今は医学も科学も発達し、体調管理一つにしても以前とは全く違う、試合で男女に多少の距離の違いをつける必要はないのではというのが理由のようです。