波乱のCC決勝第一戦は、まさかの幕切れ:ホワイトキャップス

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Canadian Championship, Whitecaps vs Toronto FC, Aug 8, 2018; Photo by ©Pacific Walkers
バンクーバーBCプレースで行われたカナディアンチャンピオンシップ決勝第1戦。ホワイトキャップス対トロントFC戦。Photo by ©Pacific Walkers

 

まさかの幕切れだった。勝利はほぼホワイトキャップスの手中にあった。残りは30秒。しかし…

波乱の幕開けはPKによる先制点。ホワイトキャップスはできる限りのことはやった。それでも届かない勝利があった。

2016年以来、2年ぶりにカナディアンチャンピオンシップ決勝で対戦するホワイトキャップスとトロントFC。勝負は終了のホイッスルが鳴るまで分からない。それが2年前に学んだ教訓だった。

その教訓をこの試合で生かすことはできなかった。

 

8月8日(BCプレース:16,833)
バンクーバー・ホワイトキャップスFC 2‐2 トロントFC

 

先制はホワイトキャップス。相手のペナルティエリアでのハンドの反則でホワイトキャップスがPKのチャンス。28分FWカマラ(#23)が決めて1‐0。しかしその直後の26分にトロントが華麗なパス回しで最後はMFオソリオ(#21)がゴールして1対1となった。

ホワイトキャップスは前半ロスタイムにMFフェリペ(#8)がレッドカードで退場となり、後半は10人での戦いを強いられることになった。明らかな誤審でのレッドカードに会場からは大ブーイングが起こった。

後半は1人少ないホワイトキャップスが圧倒した。84分には途中出場したFWハタード(#19)がMFタイバート(#31)からの縦のパスを受けて技ありゴール。ホワイトキャップスが2‐1とリードした。

そのままホワイトキャップスが勝利するかと思われたが、後半ロスタイムにホワイトキャップスDFヘンリー(#2)がオウンゴールで失点。寸前のところで自ら同点弾を献上した。

 

 

レッドカードにオウンゴール

 

MFフィリペ(#8)はスライディングをした後、主審のホイッスルを聞いて人差し指を左右に振って主張した。「今のはイエローじゃないだろ」。誰もがそう主張していると思った。

しかし、主審の判断はイエローではなかった。一発退場のレッドカード。会場には大ブーイングの嵐が巻き起こった。

見ていた誰もが、おそらくトロントの選手さえも信じられない思いで主審のレッドカードを見ていただろう。

試合後トロントFCヴァニー監督は、驚いたが「もらえるものはもらっておく」と語った。

この日トロントがもらったものは主審の誤審による1人多いアドバンテージだけではなかった。

実際、トロントは後半、1人少ないホワイトキャップスの攻撃に振り回された。「試合の展開は我々の思った通りではなかった」とヴァニー監督。

「思い通りにはいかなかった。後半はスローすぎた」。第2戦のホームではその辺りを修正して臨みたいと語るヴァニー監督の言葉には余裕があった。トロントで勝てば、優勝できる。そんな自信がのぞいていた。

それもそのはず、押されまくった後半の最後の最後に、今度はそれまでリードしていたホワイトキャップスから贈り物をもらったのだ。

試合はロスタイム、残り30秒を切った頃だった。トロントの放ったシュートは、ホワイトキャップスのゴールネットに向かっていた。GKマリノビッチ(#1)も捕球態勢に入っていた。

DFヘンリー(#2)もボールをかわそうとしてヘッドで合わせたが…。カットにいったボールは直接ゴールネットに吸い込まれた。よくあるオウンゴールの光景。しかし、このタイミングで起こるとは…。

同点になって試合終了のホイッスル。

ホワイトキャップスはどうにもこのカナディアンチャンピオンシップでのトロントとの決勝戦は相性が悪いようだ。

会見したホワイトキャップスDFデヨン(#17)は、「残念だった。チームとしてはよくやったと思う。10人での後半だったし。オウンゴールにはびっくりしたけど」と淡々と振り返った。

2点目を決めたFWハタード(#19)は、「オウンゴールで同点でも、勝っていても、第2戦がトロントであることには変わりはない」と語り、「次のチャンスを楽しみにしている」と2試合連続ゴールに珍しく自信をのぞかせ、前を向いた。

 

 

明らかな誤審にいつもは穏やかなロビンソン監督も怒りを抑えて…

 

珍しくホワイトキャップスのロビンソン監督が顔を赤らめて爆発しそうな怒りを抑えるように記者会見で語った。

記者に「この対戦は呪われているのではないか」と聞かれると「最初にその質問で嬉しいよ」と皮肉な笑みを浮かべた。

怒りの矛先は誤審だった。「大事なところで誤審が2つあった。最後のプレーの前の判断も間違っていた。あれはファウルだった。それとレッドカード。あれはレッドカードではなかった。試合を台無しにした」。

珍しくピリピリした雰囲気が記者会見場を覆った。いつもは常に気さくな応答をするロビンソン監督だから余計にその緊張感に、この日の怒りがにじみ出る。

それでも、後半1人少ない状況で戦い抜いた選手たちを称賛した。「選手たちはすごくいい動きをしてくれた。一つだけ失敗があるとしたら最後のカウンター。結果的にオウンゴールになったがあれだけだった」と語った。

「200パーセントの展開に持っていけなかっただけで、みんなよくやったと選手たちには声を掛けた。今日はそんな風に感じないと思うが、明日また選手たちには声を掛けたいと思う」と最後まで選手を気遣った。

 

2016年決勝戦の悪夢が…

 

ホワイトキャップスがカナディアンチャンピオンシップの決勝に進出したのは2016年以来、2年ぶり

その時は、第2戦がバンクーバーで行われた。バンクーバーが優勝するには勝つことが絶対条件だった。同点はシリーズの敗戦を意味する。

この試合、ホワイトキャップスは試合終了間際まで1点リードを保っていた。時計はすでにロスタイムすら終了していた。

GKウーステッドが蹴り上げたボールで誰もが勝利のホイッスルが鳴ると思っていた。しかし、待ちわびたホイッスルはならず、トロントは最後の攻撃でなんと同点弾を決めた。

この瞬間、ホワイトキャップスの優勝はなくなった。その直後、無情のホイッスルがブーイングに包まれた会場に鳴り響いた。

そして2018年、またしてもここBCプレースでトロント相手に、カナディアンチャンピオンシップ決勝で終了間際に同点弾を決められた。しかもオウンゴールで。

この「呪い」を解くにはトロントを破って優勝するしかなさそうだ。

決勝第2戦は8月15日トロントで行われる。

優勝したチームがCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)チャンピオンズリーグに進出する。